第4回 HEAD編

第4回
HEAD Japan
ラケット事業部セールス/アソシエーション

“小林 聡” さん
世界最速”13代目ラジカルシリーズ” 遂にベールを脱ぐ!!
 ヘッドのテニスラケットを語らせたらこの人の右に出る者はいないミスターヘッドこと小林氏。
生誕25周年のラジカルシリーズについてここだけしか聞けない裏話も交えて熱く語っていただきました。

Q. 世界に先駆けてラジカルシリーズが情報解禁になりました。今作品で何代目になりますか?
A. 今作品で13代目ですね。今回のラジカルシリーズは実は生誕25周年なんですよ
歴代のラジカルシリーズの画像なども持参したかったのですが・・・あいにく古い物はデータとして無いんですよ・・・・
かわりに歴代のラジカルシリーズのカタログを持参しました(会社の資料になるように個人的に取っています)
Q. ラジカルシリーズの中で一番売れたシリーズは何でしたか?
A. 一番数が市場に出たのはTi.ラジカルですね
Q. 確か初代のラジカルツアーをA・アガシが先駆けて使用していたと記憶していますが
A. 1992年まではドネ―社のプロワンを使用していますね。
初代ラジカルツアーが誕生したのが1993年。 1992年のオフにヘッドとしてオファーを出して商品をテストしてもらっていたんですよ。
ちょうど1992年のウインブルドンで優勝を飾って注目されている選手でした。選手としての注目は高いのですが・・・・
「スパッツ」「バンダナ」「蛍光カラー」「ナイキチャレンジコートシューズ 3/4カット」「ジーパンのハーフパンツ」など彼がブームを起こしたアイテムは数知れず
テニス界の常識にとらわれない・・・言ってみればテニス界の異端児ですよね。そんな彼も世界ランキングNo1には届いていなかったんですよ。
特にこの時代は群雄割拠!! ドネ―社のプロワンにこだわりを持っていたと思うのですが・・・ おそらく何かを変えたくてヘッド社の商品テストを行ったのではないでしょうか
ヘッド社は彼の為にそれまで無かった新しいフェイスサイズと独特のフレックス(ラケットの強度)を持つ17種類もの専用プロトタイプを作くりテストをしてもらってます
フレームの厚さ、ストリングパターン、フレームでたわませる部分などの仕様をかえて・・・たまたま私の上司がそのうちの1本を日本に持ち帰ってきて
最終的にはそれは選ばれなかったですがフレーム厚24mmでしたね。
Q. A・アガシは男子選手では珍しいオーバーサイズを好んで使用していましたよね?
A.
当時のヘッド社のラケットは600平方センチメートル(93平方インチ)、660平方センチメートル(102平方インチ)が基本でして、
アガシの為に、690平方センチメートルのフェイスサイズの新たなモールドを起こして作り、と同時に他の選手が使用できるようにMPの大きさの物も並行して製作していったんです。
プロトタイプですので1個1個のグロメットパーツを変えたり、色々な所に鉛を貼ってみたり・・・様々なトライをしていました。
既存の物ではなく全く新しい物を彼に試してもらって・・最終的に彼が選んだ物2種類。これを更に細かな所を調整していき出来上がってます。
彼の要望・・・「200キロで飛んでくる速いサービスをスピンをかけてしっかりリターンしたい」
このスピードですと真ん中を外すケースが多々出てくるので彼はそこにスピン性能やパワーを求める為にオーバーサイズをセレクトしていたそうです。
更にスイングスピードが速くなるとボールを捉える位置が先端方向にいくわけです。当時は先端部分でどういうふうにボールを食わせるか・・・ラケットの先端方向を
極限まで柔らかくするんです。そうする事でボールをひっかける。そういったコンセプトをラケットに重視していました。
← 記念すべき初代ラジカルツアー690

実はこのフレームのイエロー、グリップのイエローなどA・アガシのリクエストらしい・・・

Q. 一時期アガシはケガの影響もありランキングを下降していましたね。1994年がアガシ、更にはラケットの転換期でしたよね?
A.
4代目にあたる「Ti・ラジカル」が発売。ツアーシリーズとしては初めてチタンを搭載し、それまでには考えられなかった295gという軽量トーナメントモデルを実現。
周りからこの軽いラケットで大丈夫なのか・・・時代背景的に否定されるケースが多かったですね。
軽いラケットはボールに打ち負ける・・・重たいボールが打てないなど・・・・それを払しょくしてくれたのがアガシですね!!
さらにこのモデルは大ベストセラーになりました。更に今のラジカルシリーズのイメージからのオレンジがこのモデルからスタートしています。
← 1999年発売Ti・ラジカル

ツアーモデルでありながらも295gという軽めな設定
よくチタンを使用しているからラケットが軽い・・・こんな言葉も飛び交ってましたが・・・実は・・・
「チタン」自体は素材としては重たい部類に入ります。但し強さが際立っていた事でラケットに使用するカーボン素材を減らす事で軽量化に成功!!

更に1999年の全仏オープンでアガシが優勝した事で生涯グランドスラムを達成!!

Q. この時期以降からテニスラケットに使用する素材がフォーカスされていますね
A. 当時ラケットメーカーに共通するネタなのかな・・・・チタンもそうですが・・・”ピエゾマテリアル”
衝撃を受けると電気信号に変換するという・・これは物理的な性質を持っている素材なんですけど
こういう素材の売り込みも・・・素材メーカー、開発メーカーからあるんですよね。そういったものをセレクトして採用する事もあります。
一方ではメーカーの開発スタッフが・・・・え~と・・・ヘッドの本社にですね商品開発の専門チームがあるのですが
そのチーム向けの・・・どう考えても遊び部屋があって。へたしたら子供の保育用のお部屋かなというくらいのおもちゃ箱があったり大きなボードや紙があったり
ソファがあってカーペットがひいてあってゴロゴロもできるし・・・何するかと言うと
そこでアイディアを出したり、時にはおもちゃを持ち込んで来たり・・思いついたことをなんでもいいからボードに書いたり・・・こうしたらボールが飛ぶ、こうしたらコントロールがよくなるなど
様々な柔軟なアイディアを出してそれを形にしていく。
素材などの物理的にできる事、アイディアにしてできる事をどれだけ融合できるかみたいな事を考えてるんですよね!!
Q. 確かグリップ内部にコンピューター的な物を入れた物もありましたよね?
A.
チップシステムを入れたラケットですね。
実は・・・・日本テニス協会のほうから「ラケットにITFのルールで動力源となる電池が入っているとか形状が変化するとか・・装置を付けたものは使用不可になっている」
それに抵触すると言われたことがあります。これに対して抗議文を出して止めた事もあります(笑)
それぐらい誤解されてしまう画期的な物をヘッド社は作ってますね。
年々ラケットに対するパワーに着目はされてきていますが・・・・
ラジカルシリーズのコンセプトは発売当初から全く変わってないんですよね。
先ほども話しましたが先端方向をたわませてボールを食わせる!!
Q. この時期位(2002年)もまだオーバーサイズの需要が高かったのですか?
A. アガシの影響がまだまだ強くオーバーサイズが主流でした。
今現在ではオーバーサイズ(ツアーモデル)が消えてますからね。
2000年位の時期ではラジカルの需要の内訳でオーバーサイズが90%を占めていたかな・・・
Q. マレーもジュニア時代からヘッドのラジカルを使用していましたよね?
A. アガシのイメージが強いラジカルシリーズですが”I ラジカル”をマレーはジュニア時代から愛用してますね。
Q. 最近まで塗装だけ変えて使っていたという噂が・・・
A. 今は使ってないよ(笑)・・・このIラジカルシリーズが廃番になってからも2008年位までは使っていたかな・・・
世界ランキング2桁に入ってからもこのシリーズのMPを離さずに使用してんですよ実は。
だから彼のテニスのベースはこのラケットにあるんですよね!!
このIラジカルの前(Ti.ラジカル)からラジカルシリーズにオレンジが使用されて・・・
i.ラジカルシリーズの頃には「ラジカル=オレンジ」というのがはっきりしてきました。
VI(ヴィジュアルアイデンティティ)というか・・・ラケットを見てシリーズが一目瞭然にわかるように・・・
こういった考え方を新たに取り入れてきた時代ですね
その後のラジカル変遷
2003年「リキッドメタルシリーズ」
素材競争の中で出てきた新たな素材。
素材も進化したがベースのカーボン素材も良くなってきた時代
更にラケットの金型を作る技術も進化した時代
フレームの4隅に波が打っている・・これはスイートエリアの拡大
更には4隅に素材配分がされる事で面剛性のアップにも繋がっていた

2005年「フレックスポイントシリーズ」
考え方はスゴイ面白いラケットだったよね・・・
アガシが現役最後に使用してたシリーズ(2006年に引退発表)
フレームくぼみを設ける事でフレームの屈曲ポイントを作り出す。
この機能も例の遊び部屋からの発想なんだよね(笑)
これも裏話なんだけど・・・今でこそヘッド社の選手動画が面白いと評判なんですが・・・それの先駆けがこの時。
アガシとフェレーロが夜の美術館に忍び込んでテニスをする・・プロテニスプレーヤーがテニスコート外でプレーをする演技を行うこれは衝撃だったよ。
更に・・このラケットがでる数年前からNEXTアガシが課題で
2002年位からチームエリートというものを展開し始めて才能あるジュニアを育成していく・・・
そこから育ったのがガスケでありマレーもジョコビッチもそうです

ラジカルシリーズの8代目「マイクロジェルラジカル」
この時代もラケット素材の訴求は続いていましたね。
「マイクロジェル」これは凄く軽い素材で手のひらに載せてもわからないくらい
この素材をカーボンに融合する事によって軽いけれでもボールが当たった時に均一につぶれて均一に戻るイメージです。
ただし、このモデルまでは面白いのがフレームの厚さを変えてボールを飛ばそうという考え方には一切触れてきていないんですよね。

ラジカルシリーズの大きな転換期
2009年「ユーテックラジカル」ユーテックはテクノロジーではなくYoyr  Technology  の略称で・・・・
あなたにとってのテクノロジーは何か?それはプレーヤーによって違います
あなたにはどのモデルが合うのか!!ラインナップが一気に横に
広がったんですよ。
ここでついにラケットフレーム形状がラウンド形状に変わったのがポイント
実はジョコビッチの影響があるのです。
プレステージシリーズはボックス形状、スピードシリーズは台形
ここでラジカルもボックスになると似通ってしまうので
よりラケットをセグメントする為にラウンドにした経緯が・・・・
フレームは厚くないがラウンドにする事で、反発力が上がっていくんですね。

ここは更に進化版  キーワードは「IG」(インネグラ)
この素材によってよりパワーアップ、衝撃緩和、打球感にもこだわった素材。
ユーテックシリーズが大きなインパクトが合った事で少し霞んでしまったかな。

3回目の大きな転換期はこれ!!  2013年発売 

第11代目シリーズ「グラフィン」シリーズの登場なんですよ
これはラジカルそのものというよりもヘッド社全部のラケットの転換期ともいえる。
「バランス革命」
グラフィン素材によってシャフトの強度を上げる事ができました。
ここに使用していたカーボンの分をラケット上下に割り振りましょう・・・
重さもバランスも変わらないけれどスイングウエイト(ボールを打つエネルギー)が高めたんです。
この頃からマレーが世界のBIG4と呼ばれる位置に上がってきてます
プレステージ、スピード、エクストリーム、インスティンクトなど様々なシリーズがある中でこのラジカルシリーズをど真ん中のベンチマークラケットにしたい!!
パワー、コントロールなどすべての項目を平均点以上の90点にここからラジカルシリーズ=オールラウンドプレーヤー向けに洗練されていってます。
国内、国外のヘッド契約している選手での選択率が高いのがラジカル
どんなプレーヤーにも受け入れやすい仕上がりに


12代目ラジカルシリーズ「グラフィンXTシリーズ」
グラフィン素材の進化!!
グラフィン素材がより軽量化、より強くなり「極バランス」を更に追及
このグラフィン自体が選手間でも認知をしてもらっている
衝撃的な素材”グラフィン”をしっかり踏襲している仕上がり
マレーだけでなく…今の旬な選手で言うと2017年全米OPENシングル優勝のS・スティーブンスもこれを使用しています
数年前に一度彼女と会って話をした事があってね・・・非常にお茶目な感じの子でしたね

Q. ラケットの変遷をみているとテニスのプレースタイルの変化も読み取れますよね
A. 本当に。プレースタイルの変化を感じますね。
現代テニスでは”オールラウンド”
更にはBIG4に関しては”スーパーオールラウンド”のイメージですね
Q. だいぶ昔話に花が咲いてしまいましたが・・・今作品のラジカルシリーズの特徴を詳しく教えてもらえますか?
A. ここからが本題ですよ
2017年11月に先行発売いたします。 実際には2018年モデルですが。
「グラフィンタッチ」
この素材は2017年初頭から採用されてまして・・・テクノロジーとして世界最先端のものです。
ラジカルの進化!!グラフィンの完成型!
現代ではテニスラケットが凄く進化しています。カーボンそのものもそうだし、そこに素材テクノロジーが加わり
面の剛性、フレーム形状、厚みなどいろんな要素が組み合わされて更にそこにストリング張り上がってラケットが完成されます。
今のテニスに求められているのは「スピード化」。ラケットが軽いから速く振れるわけです。速く振れればボールのスピードも上がるし回転量もあがりますよね。但し時間がない・・・時間がどんどん削られていく。とするとオフセンターでボールを打つリスクは高まりますよね
このリスクを最小限にして安心してプレーする環境を新作ラジカルが作ってくれるんですよ!!
「音」  ボールをインパクトした時の音でどんなショットを放ったかを瞬時に理解でき次のプレーに備えられる

▼音のイメージ


Q. デザインもこってますね
A. 先ほども述べましたが・・・ヴィジュアルアイデンティティを採用してますね。
イメージでは動脈と静脈・・・いわゆる血管みたいな・・・最初私がこれを見たときは「ん?」と思ったのが正直なところですが
私たちはいきなりラケットを見せてもらうわけではなくて・・・ますはデザインコンセプトから説明を受けて
ただ、このイメージデザインがラケットになった時には「ブルーネイビー&オレンジ」がはえていて良い仕上がりになっているなと。
またラケット上部がつやあり、下部がつやけしに仕上げているところもこだわりですよ
このつやあり、つやなしを組み合わせる事が難しい技術なんですよね・・・
Q. マレーは試打は既に行っているんですよね?
A. 選手たちも常に新しい物や新しいテクノロジーは常にテストしてます。
ツアー中にテストするケースもありますが殆どがオフシーズンにテストを行ってます。
自分たちにとってプラスになる物は取り入れようとするし、フレーム形状の変化はなかなか受け入れないないですが中身の素材はの変化は
受け入れるケースが多いです。
Q. NEWテクノロジーは契約選手の中でランキングの高い人から試していくのですか?
A. そんな事はないですよ。本社の開発陣もテストしますし、結構近所の所属プロやタイミング合う選手が行うケースが中心です。
Q. だいぶ昔話に花が咲いてしまいましたが・・・今作品のラジカルシリーズの特徴を詳しく教えてもらえますか?
A. ここからが本題ですよ
Q. 他のメーカー使用選手も試したりするのですか?
A. 選手から使ってみたいと話がでるケースが多いです・・・そこで試打してみたり。
やっぱり隣で練習している選手が使用している物はきになりますよね(笑)
ラケット、ストリング、シューズなどは試合の勝利に直結しますから・・・やはり契約金などの高さはあまり気にしないみたいですよ
Q. やはり選手にとってテニスラケットは凄く大事な物ですね。
選手専用にチューニングとかするんですか? 特にトップ選手などに対しては?
A. プレーヤーサポート体制はしっかりしてます。 プレーヤーの専用データベースがあったり、選手専用の棚があったり。
トップ選手やそこに届かないまでも期待されてる選手であったり・・・サポートはしてます。
基本的には市販されているものがベースで、重さ、バランス、長さなどの要求に応えたりはします。
テニス愛好家も”おもり”など買って調整しているのと同じ感覚ですね。
大会とかサーフェスによって調整する事もあるみたいですよ。
特にクレーコートシーズンでは重さをあげてます。なぜならばテンポが遅くなる分、スイングウエイトを重たくしてボールを重たくしたい
これがウインブルドンみたいな大会になると少し軽くして取り回しをよくするケースですね。
なんども話が逸れてしまい申し訳ございません・・・・(笑)
Q. ラジカルシリーズの特徴のスロート部分の細さ・・・これはどんな効果があるのですか?
A. 「硬さ」ですよね。あるウエイトの中でしっかり中身を詰めて作ろうとすると・・・膨らむと・・空間が大きくなりますよね。
たわみが深くなりますよね。フレーム全体にたわみは必要なんですけど・・・スロート部分が波打つ事を抑えたいんですよ
スロートを細くして中身を詰める事で剛性が増します。見た目は弱そうですけど強度は上がるんです。
更に空気抵抗も考えてたりしてます。
フレーム部分の厚さでボールにパワーを出しつつスロート部分でたわみを生み出しボールを食いつかせてコントロール性を上げる効果がになります。
Q. ラジカルの特徴であるスロート部分の8穴もポイントですね
A. 8穴にする事でストリングが中心に集まる事でインパクト時にフェース面が暴れないようにしてます。
但しそれだけだと「オールラウンド」を売りするこのモデルには行きつかないんです。
ストリングの可動を出す、フレームをたわませるなどを組み合わせて、パワー・スピン・スライス・コントロール全てが打てるように仕上げてるんですね。
更に小林氏による
今作のNEWラジカルシリーズの
説明はこちら!

HEAD Graphene Touch Radical


Graphene Touch Radical PRO 232608

Graphene Touch Radical MP 232618

Related Projects